ひかりのなかで

あたたかくて穏やか

「普通のこと/当たり前」は「普通のこと/当たり前」ではなさそうなんだなあ。 みつお

 

多くの会社がそうであるように、わたしが勤めている会社も9時が始業時間。今日は電車が少し遅れていて、始業3分前の女子ロッカーはとても混んでいた。先輩がわたしにこう言った、「若い子たちって来るの遅いんだね、ちょっとびっくり」。

(なぜわたしに向かって「若い子」と言ったのか、わたしを含めているのかいないのかは置いといて)…まあ、そうかもしれない。確かに3分前はちょっとバタバタしてよろしくない。なにか不測の事態が起きたら始業に間に合わないかもしれない。でも、10分前に身の回りを落ち着けて着席しているのか、1分前にサッと座るのか、なんていうのは本人がどういう風に働きたいのかにもよる。拘束時間外にわざわざ出社したところで朝食を食べるか本を読むくらいしかわたしは思いつかない。それに、朝食も本を読むのも、できれば会社ではしたくない。就業規則10分前に着席していること、って決まっているのならそうするけれど、そうでないのなら始業10分前の使い方は人それぞれなんじゃないかな。社会人としてうんたらかんたら、っていうお叱りを受けそうだけど、それもひとそれぞれだからひとまず横に置いておく。

 

でもね、先輩の言う「ちょっとびっくり」から読み取れる、「先輩より先に来る」みたいな年功序列型の謎ルールは、学生時代の部活動で経験してきたし、以前はわたしも同じように考えていたから分からなくもない。

ちょっと大げさな話になるし、こっちは明確に規定されていた謎ルールなんだけど、某学校の吹奏楽部部員だった当時「校外において、公園や公共の場で許可なく飲み物を飲んではいけない。許可されたときのみ、その場にしゃがんで飲むこと(立って飲んではいけない)」というルールがあった。お母さんやお父さん世代の話ではなく、7年くらい前の話。ある日、炎天下で頑なにそのルールを守って熱中症にかかり、救急車で運ばれた。バカじゃん、って今なら思えるんだけど、その時のわたしにとっては部活のルールがとても大切だった。周りと違うことをして非難されるのが怖かったからだった。実際、規則を破ると五人くらいいた幹部という人たちにひとりひとり謝らなくてはならないし、しかも整合性のないお叱り――「(我が吹奏楽部部員としての)自覚が足りないんじゃないの?」みたいな――を受けなければならなくて、そのあと、規則を破ったものは大抵村八分に遭っていた。おそろしい。

 

元の話に戻るね。今回の「若い子たちって出社遅いんだね(早く来るのが当たり前)」っていうのは規則にもあたらないし、明確なルールでもないんだけど、暗黙の了解みたいなかたちで「○○会社の社員という集団に属している以上、若い子たちは先輩よりも先に来るべきである」という謎ルールは確かに存在していると思う。でもここに集まっているのはみんな仕事をするためであって、日々の業務がきちんとこなされていればいいはずなんだけどね。(もちろん仕事ができればなにやってもいいという極論ではないけれど)

わたしもあらゆる謎の暗黙のルールから抜け切れていないせいできちんとルールの外側から見られていないものもたくさんあるし、盲点がたくさんあって恥ずかしいんだけど、今の時点では会社のなかで絶えない「あのひとってなんで××なの?ありえない!」みたいな愚痴は、多かれ少なかれ個人個人のなかに存在する「謎ルール」や「当たり前」を基準に考えているから出てくるんだろうなあ、って思った。それは共有されていないし、当たり前ではない。あくまでも自分のなかに存在する、集団に適合するための、つまり、集団のなかでなるべく文句を言われず快適に過ごすための、道具でしかないみたいなんだなあ。

おしまい。