ひかりのなかで

あたたかくて穏やか

ねむい

 

「あっ、洗濯しなくちゃ」

自分の寝言で目が覚めた。でも洗濯しなくちゃいけないのは本当だった。起き上がって、寝ぼけたまま洗濯機の上の棚を探る。妙に軽いボトル。

「あっ、洗剤切らしてるんだった」

洗剤がないということに気づいたら、急にまた眠気が強くなってきた。ふわふわのパジャマがあったかい。ベッドにもぐりこみ、毛布にくるまり、おやすみ…

 

学校の廊下で、わたしは女の子と一緒に歩いている。この子は誰だか分からないけど友だち。よくわかんないけど。そうなんだ、友だちなんだ。サラッとした長い髪を後ろに払って、彼女はわたしの手を引いた。ああ、女の子の手ってやわらかい。ドキドキする。わたしも女の子だけど。女の子ってやわらかくていい匂いがしてすてきだ。女の子万歳。

 

友だちはぐんぐん長い廊下を歩いていって、たくさんの窓と他の生徒とすれ違った。萌え袖ズルズルカーディガンの細身長身男子がいる。はあ、こういうの大好きなんだよね…すきすき…銀縁の眼鏡とかかけてほしい。みんなおしゃべりをしていたり追いかけっこをしていたり、歌を歌っていたり、二つ折りのケータイをいじっていたりする。長い廊下、たくさんの窓。初夏の日差し。外には暗い森。踏まずの森だ、懐かしいなあ。遠くから近くへピントが合う。あっ、てんとう虫。サッシにてんとう虫がいる。三匹くらいいる。銀色のサッシは冷たいかな、あったかいかな。座り込んだ女子生徒たちがあぐらをかいている。そんな座り方したらパンツ見えちゃうよ。開けっ放しの扉から教室が見える。お昼休みの光景。奥の窓際の席で銀縁眼鏡の男の子が本を読んでる。黒板の落書き。散らばるトランプ。ああ、あの男の子をもっと見ていたい…..女の子のすばらしく柔らかい手が離れる。あっ、待って。ドボン。

 

急に足元がふわっとなくなって、トロッとした液体に落ちた。なんだろう、これ。泡がとてもキラキラしてる。甘い。……..ガムシロップだ。ガムシロップに溺れてる。あたり一面キラキラしていて、廊下の風景が滲んでいる。息が出来ないな…息が…甘いな、すごく甘いな…制服、洗濯……

 

「はっ!洗濯!しなくちゃ!」

 

あれ。目が覚めた。まだ口の中が甘い気がする。そうだよね、ガムシロップに落ちたんだもんね。寝ぼけたまま洗濯機の方に歩いていって棚を探る。妙に軽いボトル。

 

「そうだ…洗剤切らしてるんだった…」

 

 

妖怪三題噺さま http://twitter.com/3dai_yokai
本日のお題は「洗剤」「蜜」「窓」でした。