ひかりのなかで

あたたかくて穏やか

夢見る少女A

週に5回。朝の三時半に起きて、始発の電車に乗り、明るみ始めた空を窓から眺めながらまだ誰もいないお店へ行く。お店のガラス戸は鍵が下の方に付いていて、しゃがんで開ける。玄関マットが朝露に濡れて冷たい。中へ入ると、誰もいないしんとした椅子とテーブ…

questioned by lalalagi 後半

ケルクショーズ・イリヤ「日常100の質問(questioned by lalalagi)」(らららぎさん) http://chatte.hatenablog.jp/entry/2016/12/04/053251 後半戦!レディーファイッ! 51:ふだんよく聴く楽曲をクラブで改めて聴くと、特段「いいなあ」と思えるのはなぜでし…

満ち足りた味

ジャックは塗装屋の見習いでした。まだペンキを触らせてもらうことはできません。余計なところに色がつかないようにマスキングテープを貼って、貼って、貼るだけで一日が過ぎていく毎日です。ペンキを使っていなくても、彼の黒い肌はピンクや緑や白で汚れ、…

明日天気になあれ

それは、ざんざん降りの雨続きの月のことでした。そうっと、ゆうまくんは教室の窓の外を覗きました。広い校庭の向こうの方には高い錆びた柵があって、その向こうには小川が流れていて、その奥には暗い、暗い、「踏まずの森」がありました。そこには誰も入っ…

questioned by lalalagi 前半

ケルクショーズ・イリヤ「日常100の質問(questioned by lalalagi)」(らららぎさん) http://chatte.hatenablog.jp/entry/2016/12/04/053251 おそろしいものが出来上がってしまった…という気持ちですが、果敢に取り組もうと思います。どうぞお付き合いください…

ある昼下がり

足元に転がってきた黄色のゴムまりがぶつかり、てんてん、と跳ねて、やがてその動きを止めた。拾い上げると長い髪を二つ結びにしたちいさな女の子が芝生の上をかけてきてわたしを見上げた。 「おねえさん、何してるの?」 「お散歩してたんだよ」 「ふぅん」…

手遅れな飲み物

ココアを作る。キッチンに立って、ミルクパンに牛乳を少し入れてあたためて、ココアパウダーを少しずつ加えて練っていく。お砂糖を入れたところで、本を読んでいた君が後ろからわたしの腰に手を回し、首筋に顔をうずめる。 「本、読んでたんじゃないの?」 …

名を呼ばれることへのつぶやき

「××ちゃん、××ちゃん、」 ただ単に伏字にしている訳ではなくて、本当にこう聞こえる。わたしは本名の下の名前で、振り返ることができない。自分を表す記号として認識することができない。一度だけ、その名前と自分を一致させてくれた人がいたのだけれど、そ…

チョコレート、見失った「君」のゆくえ

チョコレートを食べるのは、キスをするよりも気持ちいい、のだそう。わたしは毎日チョコレートを食べなければ気が済まなくなっていて、イライラの充満したオフィスの自分のデスクでも、カフェにいる時でも、湯船に浸かっている時でも、ベッドの中でも、チョ…

容量を増やして電池を新しくすれば日々の生活は回っていくのか?

「自分のことで精一杯なの」というのは、もう変えようのない事実であり、どうやってキャパシティを広げるかを思い悩む毎日です。イヤイヤ期に入ってしまうと生活がどんどん荒れていってしまう。片付けができなくなり、料理ができなくなり、人と会うのが億劫…

「君」という存在を見失うわたしについて、崩壊した言葉で

若干クズだが人間としてはまあ、テイレベル、というどこぞの皆の好きなアーティストの歌詞があるんですが、なんでしょう、まあ、そのくらいがいいんじゃないかとも思ってしまう。 世の中には下心的な好意を持って接してくれるひとがいて、それはなんというか…

まどろみ、昨日の晩のこと

夢を見たような読んだような。寝かけの頭に黒い猫又がスルリと込んできた。もちろん大妖怪なので、人を飽きさせるようなヘマはしない。現代っ子で世間知らずのわたしにも分かる言葉で淡々と今日あったことを語り出す。広げたままのデイベッドにその黒い大き…

書き終わってからのこと

今年の七月あたりにお誘いいただいた同人誌あみめでぃあの運営にいつのまにか加えられていました。特に大きな仕事はせず、ただ思うように原稿を書いて素人の表記揺れ・誤字脱字などで編集長に多大なる迷惑をかけただけなのだけれど、いいのだろうか。(編集長…

この間書いていたもの

わたしは何かを書くのには慣れていないし、さらに言うと、伝えたいことがあまり具体化しない。普段、考えるスイッチが切れている。ブレーカーを落としているみたいな状態。でも時々すごい人がいて、わたしの中から「わたしが書きたそうなこと」をスルッと引…

みんなの家

それは突然のことだった。ヌーベルに遊びに来ませんか。家主からのお誘いではなかったということに全てが終わったあと気付いた。わたしはとても軽い気持ちで、その時応じてしまった。きっと眠らなくちゃということで頭がいっぱいだったのだろう。いつでもこ…

夜中の二時になろうとしている

時刻、夜中の一時五十六分。明日仕事に行かなかければならないというのに、まだ目は冴えている。大学時代の友人からの電話。約二時間。もう寝なければと睡眠薬を口にする一歩手前のことだった。断ろうと思えば断れた筈だ。でもそうしなかった。彼の声を聞き…

動けない日

何もできないどころか、ベッドから動けない日がある。会社にすら行けなくなった。気にし過ぎても仕方がないので、動かないままでいる。不健康だけど、仕方がない。 強制的に眠らせていた身体が突如として電源オフになるような感覚。三日間、15時間以上の眠り…

胡乱な客

エドワード・ゴーリーの絵本ではなく、人間の姿をしたなにかたちについて。 いままで出会ってきた不可解なものたち。それは近くにいるのにチューナーが合っていないのか全く聞こえない。周波数を合わせようとこちらが身を寄せると、理解させまいという風に遠…

マドレーヌ

実家にいた頃、あるパティシエの特集をテレビで見ていた。「マドレーヌはお菓子作りの基本なんです」看板も貝の形をしたかわいいマドレーヌだった気がする。おぼろげな記憶、彼の名前は失念。 思い立って哲学を学ぼうと図書館へ向かった。所狭しと並ぶ本が甘…

許された日

君は元気だ、と言われてきた。辛くてもがくのすら自分には許可されていないのだと感じて、せめてネットの世界でなら、個人的な日記のようなものなら、と思って2年前くらいからツイッターを始めた。わたしは両親や周りの人と戦うのをやめた。苦しみに共感して…

カフェ小話。

カフェアルバイト時代で記憶に残っていること。 10年以上ずっとそこでアルバイトをしていて、「出来る人」という枠を超えて神さまのように崇められていた大ベテランさんがいた。 手を抜いていないのにとても速かった。そして丁寧だった。働いているときはな…

逃げるか恥か

我らがレトロ氏にお題をいただきました。論文じゃないし持論をざっくばらんに行きますね お題: 逃げ続けるのと恥をさらし続けるの、どっちを選ぶか どうかなぁ…まず逃げるの対義語は追うだと思いますので、まず、お題の恥をさらし続けるというところは追うけ…